忍び出る。小さな素足で無器用に床石《ゆかいし》をたどりながら、階段を降りて見に行きたくなる。しかし扉は閉《し》まっている。それを開くために椅子《いす》の上にのる。とたんに何もかも引っくり返る。身体を痛めて彼は泣き声をたてる。おまけにまた打たれる。いつでも打たれるのだ!……

 彼は祖父といっしょに教会堂にいる。退屈してくる。たいへん気づまりである。身動きすることも許されない。会衆は彼に分らない言葉をいっしょに言い、それからまたいっしょに黙ってしまう。皆おごそかな陰気な顔をしている。平素の顔付とは違っている。彼はおずおずと人々を眺める。隣家のリナ婆《ばあ》さんは、彼の横にすわって、意地悪そうな様子をしている。時とすると、祖父までが見違えるような様子になる。なんだか薄気味が悪い。けれどそのうちには慣れてくる。できるだけのことをして退屈をまぎらそうとする。身体を揺ったり、首をまげて天井を眺めたり、顔をしかめたり、祖父の上着を引っ張ったり、椅子《いす》につまっている藁《わら》を調べたり、指先でそれに穴を開けようとしたり、鳥の声に耳を傾けたり、また頤《あご》がはずれるような大|欠伸《あくび》をす
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