て、管弦楽団が国歌を奏して敬意を表したのだった。ジャン・ミシェルは震え声で、孫に最後の世話をやいていた。
序曲がまた始まって、こんどは終りまでやられた。いよいよクリストフの番となった。メルキオルは巧妙に曲目《プログラム》を立てて、息子の妙技と父の妙技とを同時に発揮されるようにしておいた。ピアノとヴァイオリンのための、モーツァルトの奏鳴曲《ソナタ》を、二人で合奏することになっていた。効果を増すために、まずクリストフが一人で舞台へ出ることにきまっていた。人々は彼を舞台の入口に連れてゆき、楽壇の前方にあるピアノを指し示し、なすべきことを最後にも一度言ってきかせ、そして袖《そで》道具の外へ押し出した。
彼は長い前から芝居の広間へは来つけていたから、たいしてびくついてはいなかった。しかし幾百人の眼の前で、舞台の上にただ一人立った時、にわかに気後《きおく》れがして、本能的に後へ退《さが》ろうとした。袖道具の方へふり向いてそこへはいろうとまでした。けれども、そこには父の姿が控えていて、怒った身振りや眼付をしていた。彼はつづけて進み出なければならなかった。そのうえ、もう聴衆から姿を見られていた。彼
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