また、その勇ましい魂の熱火がクリストフを焼いた。彼は炎の急湍《きゅうたん》に巻き込まれた。その他はすべて消え去った。その他はすべて彼にたいしてなんであったか? 狼狽《ろうばい》してるメルキオル、心痛してるジャン・ミシェル、忙しそうな皆の者、聴衆、大公爵、小さなクリストフ自身、それらのものに彼はなんの用があったか? 彼は自分をさらってゆく恐ろしい意力の手中にあった。彼はその後に従ってゆきながら、息をあえぎ、眼に涙を浮べ、足をすくめ、掌《たなごころ》から蹠《あしうら》にいたるまでぞっとしていた。血潮は襲撃の譜を鳴らしていた。そして彼は震えていた。……かくて、飾り框《かまち》の後ろに隠れ、耳をそばだて、じっと聴いているうちに、彼は心の底ではっとした。管弦楽はある小節の真中でぴたりと止っていた。そしてちょっと休んだ後、銅鑼《どら》やティムパニの大きな音で、公《おおやけ》の威勢をもって軍歌を奏し出した。その二つの音楽の移り変わりがあまりに粗暴だったので、クリストフは憤って、歯をきしらせ足を踏み鳴らして、壁に拳固《げんこ》をつきつけた。しかしメルキオルは雀躍《こおどり》していた。大公爵がはいって来
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