屋のウォルムゼルが再三申込んでも決して手離そうとしなかった品である。しかしメルキオルは、書物の売高でその償いは取れてあまりあるものだと、少しも疑わなかった。
 なおも一つの問題が彼の気にかかっていた。演奏会当日のクリストフの服装問題だった。それについて家族の会議が開かれた。四歳くらいの子供みたいに、短い上着をつけ脛《すね》を露《あら》わにして舞台に出ることを、メルキオルは望んでいた。しかしクリストフは年齢のわりにはごく頑丈《がんじょう》だった。だれもそれを知っていた。ごまかすことができようとは思いもよらなかった。するとメルキオルはうまい考えを思いついた。燕尾《えんび》服をきせて白い襟《えり》飾をつけさせようときめた。やさしいルイザは、かわいい子供を人の笑い草にするつもりかと言い逆らったが、なんの役にもたたなかった。そういう意外な姿で出ると、そのために面白みが増して成功するに違いないと、メルキオルはあらかじめ嬉《うれ》しがっていた。そうきまると、この小さな大人《おとな》の服装のために仕立屋が寸法を取りに来た。また上等のシャツや塗靴《ぬりぐつ》も必要だった。それらのものもまた眼の玉が飛び出
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