ではね回るのを見ながら、彼は人のよさそうに笑っていた。そしていつも例の持論に立ちもどった。「それはよく書いてあるかもしれない、しかしなんの意味ももってはいない。」――かつて彼は家で催される小演奏会に臨席するのを好まなかった。楽曲がいかほどりっぱであろうと、彼は欠伸《あくび》をやりだして、退屈でぼんやりしたふうをしていた。やがて辛抱できないで、こっそり逃げ出した。彼はいつも言っていた。
「ねえ、坊や、お前が家の中で書くものは、みんな音楽じゃない。家の中の音楽は、室内の太陽と同じだ。音楽は家の外にあるのだ、神様のさわやかな貴い空気を少しお前が呼吸する時にね。」
彼はいつも神様のことを口にのぼせていた。彼は二人のクラフトと違って、きわめて信仰深かった。二人のクラフト、父と子とは、金曜日の斎日《さいじつ》に肉食することを注意して避けながらも、神を恐れない者だと自任していたのである。
突然メルキオルは、なぜだかわからないが、意見を変えた。祖父がクリストフの逸品を集めてることに賛成したばかりでなく、クリストフが非常にびっくりしたことには、その原稿から二、三の写しをいく晩もかかってこしらえ上げ
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