しまった。そしてルイザは子供のそばで眠りに入った。
 そういう間、ジャン・ミシェル老人は、雨の中に、霧に髯《ひげ》を濡らして、家の前で待っていた。惨《みじ》めな息子の帰宅を待っていた。頭がたえず働いて、泥酔《でいすい》から起こるいろんな悲しい出来事をあれこれと想像してやまなかったのである。実際そういう事が起ころうとは信じなかったけれども、もし息子がもどって来るのを見ないで帰ったら、その晩一睡もできないかもしれなかった。鐘の音を聞いて彼の心は非常に悲しくなっていた。空《くう》に終った昔の希望を思い起こしたからである。こんな時刻に、この往来の中で、自分は今何をしているか、それを彼は心に浮べていた。そして恥ずかしさのあまり涙を流していた。

 月日の広漠たる波は徐々に展開してゆく。限りなき海の潮の干満のように、昼と夜とは永遠に変わることなく去来する。週と月とは流れ去ってはまた始まる。そして日々の連続は同じ一日に似ている。
 極《きわ》みなき黙々たる日、それを印《しるし》づけるものは、影と光との相等しい律動、また揺籃《ようらん》の底に夢みる遅鈍な存在の生命の律動――あるいは悲しいあるいは楽しい
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