をくり返してみた。些細《ささい》なことまで思い出した。素足の娘がまた眼の前に現われた。うとうとしかけると、音楽の一節が耳に響いて、管弦楽がそこに奏されてるかと思うほどはっきり聞えてきた。彼はぞっと身を震わした。頭が酔わされて、枕《まくら》の上に起き上がった。そして考えた。
「僕もいつかああいうものを書いてやろう。ああ、いつになったらそれができるかしら。」
その時以来、彼はもはや一つの願いしかもたなかった。また芝居に行くことだった。そして勉強の褒美《ほうび》に芝居へ行かしてやると言われたので、いっそう熱心に勉強を始めた。彼はもう芝居のことしか考えていなかった。一週間の半分はこの前の芝居のことを考え、他の半分は次の芝居のことを考えた。病気になって芝居へ行けなくなりはすまいかとびくびくしていた。心配のあまり三、四の病気の徴候を感ずることもしばしばだった。その日になると、食事もろくろくできず、心配ごとでもあるかのようにいらいらして、何十遍となく時計を見に行き、いつまでも日が暮れそうにないような気がし、ついには、もう我慢がしきれなくなり、席がなくなるかもしれないと気遣《きづか》って、開場の一時
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