ろう! 二人とも頭の中にあることを味わいながら、黙っていた。ついに老人は言った[#「言った」は底本では「言つた」]。
「どうだ、面白かったかい。」
クリストフは返辞をすることができなかった。彼はまだ激しい情緒に打たれていたし、その魅惑を破ることを恐れて口をききたくなかった。ようやく元気を出して、大きい溜息《ためいき》をつきながら低くつぶやいた。
「ええ、ええ!」
老人は微笑《ほほえ》んだ。程へて彼はまた言った。
「音楽家の職業がどんなにりっぱなものであるかわかったかい。あんなりっぱな光景を創《つく》り出すのは、この上もなく名誉なことではないか。それはこの世で神様になることだ。」
子供はびっくりした。まあ、あれを創り出したのは人間だったのか! 彼は夢にもそうだとは知らなかった。彼にはほとんど、ああいうものは独《ひと》りでにできあがったかのように思われ、自然の手になったもののように思われるのだった。……それが、いつか自分がなりたいと思ってるような、一個の人間、音楽家の手で! おう一日でも、ただ一日でもいいから、そうなりたいもんだ! そしたら……その後はどうなったってかまわない、死ぬな
前へ
次へ
全221ページ中151ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング