心して口をぼんやり開きながら眺めた。しかしびっくりしてはいなかった。それでも劇は、彼が思いもつかない夢のような近東の事柄だった。劇詩の筋は荒唐無稽《こうとうむけい》で、まったく訳がわからなかった。クリストフは何にも見分けることができなかった。彼はすべてを混同し、人物を取り違え、祖父の袖《そで》を引張っては、何も理解していないことがわかるような馬鹿《ばか》げた質問をやたらにした。しかも彼は退屈してないばかりでなく、夢中になって面白がっていた。つまらない台本《リヴレット》にもとづいて、みずから一つの小説を作り上げていたが、それは演ぜられてることとまったく無関係なものだった。舞台の出来事はたえずその小説と背馳《はいち》するので、また新たに筋を立て直さなければならなかった。しかし彼はそれに困らされはしなかった。舞台の上で種々な声を出して進展してゆく人物のうちから、自分の気に入る者を選んで、それに同情を寄せながら、その運命がどうなりゆくかと胸を震わして見守っていた。とくに彼の心を悩ましたのは、中年の美しい女であって、輝いた長い金髪をもち、眼が馬鹿に大きくて、素足で歩いていた。演出の驚くべき不自然
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