とんど不動の姿で、現われてくる。そしてはるか遠くには、地平のはての鋼鉄の光のようにして、水の平野が、震える水の一線がある――海が。河はその海へ奔《はし》っている。また海は河へ奔ってるがようである。海は河を吸い寄せる。河は海を慕う。河は海に隠れようとしている……。音楽は渦《うず》巻き、舞踊の麗わしい節奏は狂わしいまでに揺り動く。その勝ち誇った旋風の中に、すべてが巻き込まれて一掃される……。自由な魂が宙をかすめて翔《かけ》る、空気に酔いながら鋭い声を発して空を横ぎる、燕《つばめ》の飛翔《ひしょう》のように。……歓喜、歓喜! もはや何物もない! おう、限りなき幸福!……
時間は過ぎていった。夕暮になっていた。階段は闇《やみ》に包まれていた。雨のつぶが、河の平らな面《おもて》に丸い輪を描くと、流れが踊りつつそれを運んでいった。時おりは、木の枝が、黒い樹皮が、音もなく通りかかって、過ぎ去っていった。毒蜘蛛は、餌《えさ》を食いあきて、いちばん暗い片|隅《すみ》に引込んでしまった。――そして小さなクリストフは、よごれた蒼白い顔を幸福の色に輝かしながら、いつまでも軒窓の縁にもたれていた。彼は眠ってい
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