許さない、と彼は言い張った。クリストフの方では、正しくひくまいとあまりに念を入れすぎた。主調ごとに、明らさまな悪意で小さな手が重々しくわきへそらされるのを見て、メルキオルはその狡猾《こうかつ》な策略を勘づき始めた。定規がさらにひどく振りおろされた。クリストフはもう指の感じをも失った。黙って、嗚咽《おえつ》や涙をすすり込み飲み込みながら、いじらしく泣いていた。そして、こんなふうにつづけてもなんの得にもならないし、捨てばちな道をとった方がいいとさとった。彼はひくのをやめて、これから起ころうとする嵐《あらし》を思っては前もって震え上がりながらも、大胆に言ってのけた。
「お父さん、僕はもうひきたくない。」
メルキオルは息をつめた。
「なに、なに!……」と彼は叫んだ。
彼はクリストフの腕を折れるほど揺ぶった。クリストフはますます震え上がって、殴られるのを避けようと肱《ひじ》を上げながら、言いつづけた。
「もう弾《ひ》きたくない。第一、打たれたくないし、それから……。」
彼は言い終えることができなかった。ひどく頬辺《ほおぺた》を打たれて息がつまった。メルキオルは喚きたてていた。
「うむ! 打
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