、酔っ払いの父の姿を見、乱暴なことをされ、種々な苦しみを受け、他の子供たちからいじめられ、大人たちからは侮辱的な憐れみを受け、そしてだれからも理解されず、母親からも理解されずに、生をつづけてゆくということは、決して楽しいことではなかった。万人から辱《はずかし》められ、だれからも愛せられず、ただ一人で、一人ぽっちで、しかも非常に頼り少ないのだ!――正にそのとおりだった。しかしそのことがまた、彼に生きる欲望をも与えていた。彼は自分のうちに、憤激して沸きたつ力を感じていた。その力こそ実に不思議なものだ! その力はまだ何をもなしえなかった。遠くにあって、猿轡《さるぐつわ》をはめられ、手足を縛られ、痲痺《まひ》してるようだった。その力が何を望んでいるのか、やがて何になろうとするのか、彼には想像もつかなかった。しかしその力は彼自身の中にあった。彼はそれを疑わなかった。それは振い動いて、怒号していた。明日《あした》は、明日は、その力が復讐《ふくしゅう》してくれるであろう! あらゆる害悪を復讐し、あらゆる不正を復讐し、悪人を罰し、大事をなさんがために、彼は生きたいという激しい願望をいだいていた。「おう
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