だ》が出《で》なくなりました。
 その時《とき》、杜松《ねず》の樹《き》がザワザワと動《うご》き出《だ》して、枝《えだ》と枝《えだ》が、まるで手《て》を拍《う》って喜《よろこ》んでいるように、着《つ》いたり、離《はな》れたり、しました。すると木《き》の中《なか》から、雲《くも》が立《た》ちのぼり、その雲《くも》の真中《まんなか》で、ぱっと火《ひ》が燃《も》え立《た》ったと思《おも》うと、火《ひ》の中《なか》から、美《うつ》くしい鳥《とり》が飛《と》び出《だ》して、善《い》い声《こえ》をして歌《うた》いながら、中空《なかぞら》高《たか》く舞《ま》いのぼりました。
 鳥《とり》が飛《と》んで行《い》ってしまうと、杜松《ねず》の木《き》は又《また》元《もと》の通《とお》りになりましたが、手巾《はんけち》は骨《ほね》と一しょに何処《どこ》へか消《き》えてしまいました。マリちゃんは、すっかり胸《むね》が軽《かる》くなって、兄《にい》さんがまだ生《い》きてでもいるような心持《こころもち》がして、嬉《うれ》しくってたまらなかったので、機嫌《きげん》よく家《うち》へ入《はい》って、夕《ゆう》ご飯《はん
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