ら、のこのこやってこようとは、おもわなかったんですもの。それが、あのとおりやって来て、なかへ入れてくれっていうんですもの。」
そのとき、またろうかの戸をとんとんたたく音がしました。そうして、大きな声でよびました。
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いちばん下の おひめさま、
あけてください たのみます。
つめたい泉の わくそばで、
きのう やくそく したことを、
あなたは おぼえて いるでしょう。
いちばん下の おひめさま、
あけてください たのみます。
[#ここで字下げ終わり]
すると王さまはいいました。
「それはおまえがいけないね。いちどやくそくしたことは、きっとそのとおりしなければなりません。さあ、はやく行って、あけておやり。」
おひめさまはしぶしぶ立って、戸をあけました。とたんに、かえるはぴょこんととびこんで来て、それから、おひめさまのあとについて、ひょこひょこ、いすの所までやってきました。
かえるは、そこにしゃがみこんで、上をみながら、
「わたしも、そのいすに上げてください。」といいました。おひめさまがもじもじしていると、おとうさまがまた、かえるのいうとおりしておやりといいました。
おひめさまはしかたなく、かえるをいすにのせてやりました。
するとかえるがまたいいました。
「どうぞ、わたしを、テーブルの上にのせてください。」
おひめさまが、かえるをテーブルにのせてやると、こんどは、
「さあ、その金のお皿をずっとわたしのほうによせてください。そうするとふたりいっしょにたべられるから。」といいました。
おひめさまは、かえるのいうとおりしてやりました。ほんとに、かえるが、ぴちゃぴちゃ、さもおいしそうに舌づつみうってたべているそばで、おひめさまは、ひとくちひとくち、のどにつかえるようでした。
かえるはたべるだけたべると、おなかをまえへつきだして、
「ああ、おなかがはって、ねむくなった。おひめさま、さあ、わたしをあなたのおへやにつれて行ってください。かわいらしい、あなたのきぬのお床《とこ》のなかで、わたしはゆっくりねむりたい。」
おひめさまは、もうがまんができなくなって、しくしく泣きだしてしまいました。ほんとに、ぬるぬる、ぴちゃぴちゃ、さわるのもきみのわるいかえるが、おひめさまのきれいなお床《とこ》のなかで、ねむりたいなんていうのですもの、おひめさまがか
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