ては、かもちゃん、とてもおもいでしょう。べつべつにつれてってもらいますわ。」
 そのとおり、このしんせつな鳥はしてくれました。それで、ふたりぶじにむこう岸に渡りました。それから、すこしまたあるくうち、だんだんだんだん、森が、おなじみのけしきになって来ました。そしてとうとう、遠くの方に、おとっつぁんのこやをみつけました。さあ、ふたりはいちもくさんに、かけだしました。ぽんとおへやの中にとびこんで、おとっつぁんの首根っこにかじりつきました。
 この木こりの男は、こどもたちを森の中に置きざりにして来てからというもの、ただの一ときでも、笑える時がなかったのです。ところで、おかみさんも死んでしまっていました。
 グレーテルは、前掛をふるいました。すると、真珠《しんじゅ》と宝石《ほうせき》が、おへやじゅうころがりだしました。こんどは、ヘンゼルが、かくしに片手をつっこんで、なんどもなんどもつかみだしては、そこにばらまきました。
 まずこんなことで、心配や苦労はきれいにふきとんでしまいました。親子三人それこそうれしいずくめで、いっしょになかよく、くらしました。
 わたくしの話もこれで市がさかえました。ほら、あすこに、小ねずみがちょろちょろかけていますね。たれでもつかまえた人は、あれで、大きな毛皮のずきんを、ごじぶんでこしらえてごらんなさい。



底本:「世界おとぎ文庫(グリム篇)森の小人」小峰書店
   1949(昭和24)年2月20日初版発行
   1949(昭和24)年12月30日4版発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
入力:大久保ゆう
校正:浅原庸子
2004年6月16日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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