にあうことはあるまいよ。」
こう言《い》われたので、王子《おうじ》は余《あま》りの悲《かな》しさに、逆上《とりのぼ》せて、前後《ぜんご》の考《かんが》えもなく、塔《とう》の上《うえ》から飛《と》びました。幸《さいわ》いにも、生命《いのち》には、別状《べつじょう》もなかったが、落《お》ちた拍子《ひょうし》に、茨《ばら》へ引掛《ひっか》かって、眼《め》を潰《つぶ》してしまいました。それからは、見《み》えない眼《め》で、森《もり》の中《なか》を探《さぐ》り廻《まわ》り、木《き》の根《ね》や草《くさ》の実《み》を食《た》べて、ただ失《な》くした妻《つま》のことを考《かんが》えて、泣《な》いたり、嘆《なげ》いたりするばかりでした。
王子《おうじ》はこういう憐《あわ》れな有様《ありさま》で、数年《すうねん》の間《あいだ》、当《あて》もなく彷徨《さまよ》い歩《ある》いた後《のち》、とうとうラプンツェルが棄《す》てられた沙漠《さばく》までやって来《き》ました。ラプンツェルは、その後《ご》、男《おとこ》と女《おんな》の双生児《ふたご》を産《う》んで、この沙漠《さばく》の中《なか》に、悲《かな》しい日
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