《さま》のラプンツェルをのぞきまして、食《た》べたい、食《た》べたいと思《おも》いつめて、死《し》ぬくらいになりましたのです。」
 それを聞《き》くと、魔女《まじょ》はいくらか機嫌《きげん》をなおして、こう言《い》いました。
「お前《まえ》の言《い》うのが本当《ほんとう》なら、ここにあるラプンツェルを、お前《まえ》のほしいだけ、持《も》たしてあげるよ。だが、それには、お前《まえ》のおかみさんが産《う》み落《おと》した小児《こども》を、わたしにくれる約束《やくそく》をしなくちゃいけない。小児《こども》は幸福《しあわせ》になるよ。私《わたし》が母親《ははおや》のように世話《せわ》をしてやります。」
 男《おとこ》は心配《しんぱい》に気《き》をとられて、言《い》われる通《とお》りに約束《やくそく》してしまった。で、おかみさんがいよいよお産《さん》をすると、魔女《まじょ》が来《き》て、その子《こ》に「ラプンツェル」という名《な》をつけて、連《つ》れて行《い》ってしまいました。
 ラプンツェルは、世界《せかい》に二人《ふたり》と無《な》いくらいの美《うつく》しい少女《むすめ》になりました。少女《むすめ》が十二|歳《さい》になると、魔女《まじょ》は或《あ》る森《もり》の中《なか》にある塔《とう》の中《なか》へ、少女《むすめ》を閉籠《とじこ》めてしまった。その塔《とう》は、梯子《はしご》も無《な》ければ、出口《でぐち》も無《な》く、ただ頂上《てっぺん》に、小《ちい》さな窓《まど》が一つあるぎりでした。魔女《まじょ》が入《はい》ろうと思《おも》う時《とき》には、塔《とう》の下《した》へ立《た》って、大《おお》きな声《こえ》でこう言《い》うのです。
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「ラプンツェルや! ラプンツェルや!
 お前《まえ》の頭髪《かみ》を下《さ》げておくれ!」
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 ラプンツェルは黄金《きん》を伸《の》ばしたような、長《なが》い、美《うつ》くしい、頭髪《かみ》を持《も》って居《い》ました。魔女《まじょ》の声《こえ》が聞《き》こえると、少女《むすめ》は直《す》ぐに自分《じぶん》の編《あ》んだ髪《かみ》を解《ほど》いて、窓《まど》の折釘《おれくぎ》へ巻《ま》きつけて、四十|尺《しゃく》も下《した》まで垂《た》らします。すると魔女《まじょ》はこの髪《かみ》へ捕《つか
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