、夫《おっと》はびっくりして、尋《たず》ねました。
「お前《まえ》は、まア、何《ど》うしたんだえ?」
「ああ!」とおかみさんが答《こた》えた。「家《うち》の後方《うしろ》の庭《にわ》にラプンツェルが作《つく》ってあるのよ、あれを食《た》べないと、あたし死《し》んじまうわ!」
男《おとこ》はおかみさんを可愛《かわい》がって居《い》たので、心《こころ》の中《うち》で、
「妻《さい》を死《し》なせるくらいなら、まア、どうなってもいいや、その菜《な》を取《と》って来《き》てやろうよ。」
と思《おも》い、夜《よ》にまぎれて、塀《へい》を乗《の》り越《こ》えて、魔法《まほう》つかいの庭《にわ》へ入《はい》り、大急《おおいそ》ぎで、菜《な》を一つかみ抜《ぬ》いて来《き》て、おかみさんに渡《わた》すと、おかみさんはそれでサラダをこしらえて、旨《うま》そうに食《た》べました。けれどもそのサラダの味《あじ》が、どうしても忘《わす》れられない程《ほど》、旨《うま》かったので、翌日《よくじつ》になると、前《まえ》よりも余計《よけい》に食《た》べたくなって、それを食《た》べなくては、寝《ね》られないくらいでしたから、男《おとこ》は、もう一|度《ど》、取《と》りに行《ゆ》かなくてはならない事《こと》になりました。
そこで又《また》、日《ひ》が暮《く》れてから、取《と》りに行《ゆ》きましたが、塀《へい》をおりて見《み》ると、魔法《まほう》つかいの女《おんな》が、直《す》ぐ目《め》の前《まえ》に立《た》って居《い》たので、男《おとこ》はぎょっとして、その場《ば》へ立《た》ちすくんでしまいました。すると魔女《まじょ》が、恐《おそ》ろしい目《め》つきで、睨《にら》みつけながら、こう言《い》いました。
「何《なん》だって、お前《まえ》は塀《へい》を乗越《のりこ》えて来《き》て、盗賊《ぬすびと》のように、私《わたし》のラプンツェルを取《と》って行《ゆ》くのだ? そんなことをすれば、善《よ》いことは無《な》いぞ。」
「ああ! どうぞ勘弁《かんべん》して下《くだ》さい!」と男《おとこ》が答《こた》えた。「好《す》き好《この》んで致《いた》した訳《わけ》ではございません。全《まった》くせっぱつまって[#「せっぱつまって」に傍点]余儀《よぎ》なく致《いた》しましたのです。妻《かない》が窓《まど》から、あなた様
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