かえるの王さま
DER FROSCHKONIG ODER DER EISERNE HEINRICH
グリム兄弟 Bruder Grimm
楠山正雄訳
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)約束《やくそく》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)八|頭《とう》だて
[#]:入力者注 主に外字の注記や傍点の位置の指定
(例)[#ここから4字下げ]
〔〕:アクセント分解された欧文をかこむ
(例)〔DER FROSCHKO:NIG ODER DER EISERNE HEINRICH〕
アクセント分解についての詳細は下記URLを参照してください
http://aozora.gr.jp/accent_separation.html
−−
一
むかしむかし、たれのどんなのぞみでも、おもうようにかなったときのことでございます。
あるところに、ひとりの王さまがありました。その王さまには、うつくしいおひめさまが、たくさんありました。そのなかでも、いちばん下のおひめさまは、それはそれはうつくしい方で、世の中のことは、なんでも、見て知っていらっしゃるお日さまでさえ、まいにちてらしてみて、そのたんびにびっくりなさるほどでした。
さて、この王さまのお城のちかくに、こんもりふかくしげった森があって、その森のなかに一本あるふるいぼだいじゅの木の下に、きれいな泉が、こんこんとふきだしていました。あつい夏の日ざかりに、おひめさまは、よくその森へ出かけて行って、泉のそばにこしをおろしてやすみました。そして、たいくつすると、金のまりを出して、それをたかくなげては、手でうけとったりして、それをなによりおもしろいあそびにしていました。
ある日、おひめさまは、この森にきて、いつものようにすきなまりなげをして、あそんでいるうち、ついまりが手からそれておちて、泉のなかへころころ、ころげこんでしまいました。おひめさまはびっくりして、そのまりのゆくえをながめていましたが、まりは水のなかにしずんだまま、わからなくなってしまいました。泉はとてもふかくて、のぞいてものぞいても、底はみえません。
おひめさまは、かなしくなって泣きだしました。するうちに、だんだん大きな声になって、おんおん泣きつづけるうち、じぶんでじぶんをどうしていいか、わからなくなってし
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