ヘルマンは答えた。「では、あなたはわたくしの切り札をお受けなさるのですか、それともお受けなさらないのですか」
 シェカリンスキイは同意のしるしに頭を下げた。
「ただわたくしはこういうことだけを申し上げたいと思うのですが……」と、彼は言った。「むろん、わたくしは自分のお友達のかたがたを十分信用してはおりますが、これは現金で賭けていただきたいのでございます。わたくし自身の立ち場から申しますと、実際あなたのお言葉だけで結構なのでございますが、賭け事の規定から申しましても、また、計算の便宜上から申しましても、お賭けになる金額をあなたの札の上に置いていただきたいものでございます」
 ヘルマンはポケットから小切手を出して、シェカリンスキイに渡した。彼はそれをざっと調べてからヘルマンの切り札の上に置いた。
 それから彼は骨牌を配りはじめた。右に九の札が出て、左には三の札が出た。
「僕が勝った」と、ヘルマンは自分の切り札を見せながら言った。
 驚愕のつぶやきが賭博者たちのあいだから起こった。シェカリンスキイは眉をひそめたが、すぐにまた、その顔には微笑が浮かんできた。
「どうか清算させていただきたいと存
前へ 次へ
全59ページ中55ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
プーシキン アレクサンドル・セルゲーヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング