自由自在につくられるのだから、ゲルケ博士のものとは、規模、構成において、おのずから異っている」
「どうして、氷の島が、暖かい海でも溶けないのでしょうか」
「氷上に動力所があるだろう。あの動力所から、鉄管で絶えず凍結剤を送っているから、よしんば島の表面が溶けても、急凍する海水が、新陳代謝するから大丈夫。それに、この氷は、化学的に急凍したものだから、大理石のように硬いのじゃ」
「人造島が、自由自在に、どこにでもつくられるようになると、飛行機は、安心して飛べますね」
「そうだ。戦争になると、人造島を各処《かくしょ》につくって、そこを艦隊や、航空隊の基地とし、不安になれば、忽《たちま》ち溶かしてしまうことが出来る」
「へえ、おどろいた。じゃ、人造島を発明した国は、戦争に絶対勝つというわけですね」
「人造島をつくったのは、わしだが、わしはまた、人造島に、ある種の人工霧を放射すると、忽ち溶けてしまうという、新しい兵器を発明したのだ。完成の一歩前だが、その研究をやっているのだよ」
 老人は、梟《ふくろう》のような眼を輝かした。
「あなたは、科学者ですね。博士ですね。そして、この島の主権者ですか」

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