。」
「何だつて、え?」
「はつはつは。」
「ほつほつほ。」
 高笑ひが、行列全体をゆるがした。その為めに、白張の提灯をさげた青竹が傾き、朱傘が揺れ、柩《ひつぎ》が波打つた。
「それで、爺さんな、勇助と顔馴染《かほなじみ》だから、悪いやうには取計つてくれめえつてんだよ。それでも、もしかして、先方で白つぱくれてゐやがつたら、『やい、勇助!』つて、地獄中に響きわたるやうな大声で呶鳴《どな》つてやるんだつて云つて、自分でも可笑しがつて大笑ひしてゐさしたつけがよ。」
「はゝゝゝ、勇助と與平次爺さんとでは、全く、はや、うめえ取組だ!」
「はつはつは。」「ほつほつほ。」
 みんなが長い間笑つた。やつとそれが止《や》んだ時、また、誰かが、
「やい、勇助!」と、亡き人の仮声《こわいろ》を使つた。
 それで、わけもなく、みんなを、また大笑ひに陥れた。
 と、また、別な人が、つゞいて、自分自身笑ひに噎《む》せながら、一層巧みなところを試みた。
「やい、歌唄ひの勇助!……お前がいくら三円の雪駄《せつた》を穿《は》いてゐるなんて威張つたつて、俺等が唄はしてやらなかつたら、どうもなるもんぢやなかつたらうに。……
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