。何かしら、世界がしきりに物悲しくなって来た。誰もかれも、みんなが不幸なのだ、どこに、誰が、ほんとに幸福な者がある? そんな者が一人だっているものか。……彼は、誰かが、とりわけふびん[#「ふびん」に傍点]でならなかった。それは誰か、――それは必ずしもお志保のお腹の中の子供だとも云えなかった。むろん、それは彼自身ではなかった。
[#地付き](大正三年七月)



底本:「日本短篇文学全集 第29巻」筑摩書房
   1970(昭和45)年7月30日第1刷発行
初出:「早稲田文学」
   1914(大正3)年7月号
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:kompass
校正:林 幸雄
2007年8月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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