が、麦魚《うるめ》を採ってくれってきかないんだもの。暑いから止しましょうって云ったら『日曜日くらいは妾と遊んでくれたっていいじゃないの』って泣き出すんですもの。」と、云った。
そして今度は、律子の肩へ手をかけて、
「さっき泣き出したのはだあれ[#「だあれ」に傍点]?」
こう云って律子の顔を覗き込むようにしてにっこり[#「にっこり」に傍点]した。
庸介は、なんだか、自分が責められているような気がした。妹から、「あなたは何という不愛相な兄さんなんでしょう。妾になんかちっともかまって[#「かまって」に傍点]くれないのね。」とでも云われたような気がしたのであった。そこで彼は元気よく、
「どれ、僕が採って上げよう。ね。律子。」
こう云って立ち上った。
五
房子は、自分自身を不幸《ふしあわせ》であるとは思えなかった。とは云え、自分のしているどの一つ一つについて考えてみても、またそれらをみんな集めた自分の生活全体というものを考えてみても、どうしても「これで良いのだ。」という確信を持つ事ができなかった。そうかと云って、それをどうすれば良いのだかほかに何を初めたらばよいのだかを知
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