田舎医師の子
相馬泰三
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)庸介《ようすけ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)今|灌《そそ》ぎかけられた
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#始め二重括弧、1−2−54]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ます/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
一
六年振りに、庸介《ようすけ》が自分の郷里へ帰って来たのは七月上旬のことであった。
その日は、その頃のそうした昨日、一昨日と同じように別にこれという事もない日であった。夜の八時頃、彼は、暗く闇に包まれた父の家へ到着した。
彼は意気地なくおどおど[#「おどおど」に傍点]していた。玄関の戸は事実、彼によって非常に注意深く静かに開けられたのであったが、それは彼の耳にのみはあまりに乱暴な大きな音を立てた。「なあにこれは俺の父の家だ。俺の生れた家だ。……俺は今、久しぶりに自分のふるさと[#「ふ
次へ
全84ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
相馬 泰三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング