林檎をを」]かじって本を読んでいきました。
 大晦日の晩は、客間はからっぽでした。二人の妹は、着付役にまわり、二人の姉は、夜会のお仕度という、きわめて重要なお仕事に夢中でした。化粧はかんたんでも、二階へかけあがったり、かけおりたり、笑ったりしゃべったり大さわぎで、メグが額の上にすこし捲髪がほしかったので、ジョウがこてで焼いたら、つよい髪の焼けるにおいが家中にただよいました。その失敗に、メグは泣きだすしジョウは心苦しそうでした。このほか、小さい失敗は、かず知れず、それでもやっと二人の仕度はできあがりました。メグは、銀褐色の服、空色ビロウドの、リボンに、レースのふち飾り、そして、真珠のピンをさしました。ジョウは、海老茶色の服に、かたい、男のするようなカラア、それに白菊を飾りにしただけでしたが、ともかく、二人ともすっきりとしていました。二人とも、きれいな手袋を片方ずつはめ、よごれた方をもちました。苦心のお仕度でありました。
 姉妹が、すまして歩道へ出ると、おかあさんは、
「いってらっしゃい、お夜食はたくさん食べちゃいけませんよ。ハンナを十一時に、お迎えにあげるから、帰っていらっしゃい。」と、
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