への愛をうたい、[#「、」は底本では「。」]ロデリゴを殺してザラを手にいれたい決心をのべ、洞穴へしのびより、「おい、女、御用だぞ。」と、いってハーガーに出てくるように命じました。
 メグは、白い馬の毛を顔にたらし、赤と黒の衣をまとい、杖をもってあらわれます。ユーゴーが愛の魔薬と死の魔薬を求めると、ハーガーは、あたえることを約束し、愛の魔薬をもってくるように歌で妖精をよびました。
 すると、やわらかな音楽につれて、洞穴のかげから、きらきらした翼をつけ、金髪にばらの花冠のかわいい妖精があらわれ、愛の魔薬をいれた金色の瓶をおとして、すがたをけします。そこで、ハーガーがもう一度うたうと、ものすごいひびきとともに、真黒な小鬼があらわれ、しゃがれ声で返事をしたかと思うと、黒色の瓶をユーゴーに投げつけてすがたをけしました。すると、ハーガーは、ユーゴーに、むかしじぶんの友人を二三人殺したことがあるから、じぶんは彼の計画のじゃまをするつもりだといいます。かくて、幕はさがりました。
 第二幕の舞台はりっぱでした。城の塔が高くそびえ、窓にランプがともっていました。青と白の衣をつけてザラがあらわれ、ロデリゴが来るのを待っていると、まもなく、羽かざりのある帽子をかぶり、赤い外套を着て、ギターをもったロデリゴが来て、塔の下でやさしく小夜曲をうたいました。ザラは、城をぬけだすことを歌で答えます。そこで、ロデリゴは縄梯子をかけ、ザラはそれをつたっておりるのでした。
 ところが、とんだことが起りました。それはザラが、衣の裾の長いことを忘れ、ロデリゴの肩に手をかけておりようとしたとき、裾がからまり塔はすごい音とともに倒れ、二人はその下敷になったのです。芝居はめちゃめちゃになりそうでしたが、気をきかしたドン・ペデロがとびこんできて「笑っちゃだめ、知らん顔をしてやるのよ。」といいながら、じぶんの娘のザラをすばやくひきだし、ロデリゴにむかって立てと命じ、怒りと嘲りを浴せながら王国から追放するぞと宣告しました。ロデリゴはなにをと、その老人をののしり、立ち退くことを拒みました。その勇ましい態度に、ザラもちからを得て、父である領主にたてついたので、彼は二人を城の牢屋にほうりこむことを命じますと、家来がだまってひきたてていきました。
 第三幕は、城の広間で、魔女ハーガーが、牢屋の二人を救い出し、ユーゴーを殺そうと思ってあらわれます。魔女はユーゴーの足音を聞いてかくれます。ユーゴーは二つのコップに魔薬をつぎ、小女に、「これを牢屋にいる囚人にあたえ、わしがすぐに行くと告げよ。」と、いいつけます。家来はそばへいって、なにかを告げる間に、ハーガーは二人のコップを害のないものにかえます。小女はそれを運んでいき、ユーゴーはうたった後に魔薬のはいったほうを飲み、もだえ死にます。そこで、ハーガーは、じぶんのしたことを告げますが、その歌は、一ばんすばらしいできばえでした。
 第四幕、ロデリゴが、ザラにうらぎられたと知って、絶望して胸に短刀をつきさそうとします。そのとき部屋の下で歌がうたわれザラの心はかわらないが、今あぶない目にあっているから、ロデリゴにもし真心があるなら、ザラを救いだせると告げます。ロデリゴはよろこび、投げあたえられたかぎで扉を開け、くさりをたち切って愛人を救いに走ります。
 第五幕は、ザラと父ドン・ベデロのはげしい争いからはじまります。父はザラを尼寺へやろうとしますが、ザラは聞き入れず、[#「、」は底本では「。」]悲痛な訴えをつづけ、気絶しそうになったとき、ロデリゴがきて結婚を求め、つれていこうとします。父はロデリゴが金持でないのを理由にこばみます。そこへ、家来がハーガからの手紙と袋をもってきますが、手紙にはハーガーは、わかい二人に遺言によって莫大な財産をあたえ、もしザラの父がわかい二人を幸福を妨げるならば、その身におそろしい呪いがかかると書いてありました。そして、袋を開けると、ブリキの金貨がきらめきました。これで、頑迷な領主の心もとけ、わかき二人の結婚を許したので、一同はたのしい合唱をして、感謝のいのりのうちに、愛する二人は、ザラの父の前にひざまずき、祝福をうけるところで幕がおりました。
 嵐のような喝采がおこりましたが、上等席のベッドが、きゅうにたたまれ、大さわぎになりました。幸にけがもなく救いだされましたが、そのさわぎのおさまらないうちに、女中のハンナがあらわれ、
「おくさまが、みなさんに、夕飯に階下へ来るようにとおっしゃってです。」と、いいました。
 これは、ふいうちで、食卓を見たとき、息がとまるほどおどろきました。だって、アイスクリームが、赤と白と二皿、お菓子、果実、フランスボンボン、そして、食卓の上には、温室咲きの大きな花束がありました。
「妖精が下すったの?」と
前へ 次へ
全66ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
水谷 まさる の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング