け、そのかわり、いいものを書けるようになったら、原稿を買いに来るということだったと話しました。
「それで、あたし二つともわたして来たの。そしたら、今日これを送って来たの。ローリイが見せろってきかないから見せてあげたの。ローリイは、よくできているからもっと書けというの。そしてこのつぎから原稿料を出させるようにしてやるって。あたし、うれしいわ。じぶんで[#「じぶんで」は底本では「しぶんで」]書いたもので食べていけて、みんなのくらしもらくにすることが、できるかもしれないんですもの。」
ジョウは、一気でしゃべって息がきれました。そして、新聞で顔をおおって、涙でじぶんの小説をぬらしてしまいました。ペンで、一人立ちして、愛する人からほめられるようになることは、一ばんジョウにとっては、うれしいことでありました。
第十五 雲のかげの光
「十一月って、いやな月ね。」と、メグがいったのがきっかけで、ジョウもエミイも、霜がれの庭をながめながら、いろんな気のひきたたない話をしていると、べつの窓から外を見ていたベスが、
「うれしいことが二つあるわ。おかあさんは町からお帰りだし、ローリイさんは、なにかおもしろいお話でもありそうに、お庭をぬけて来るわ。」
二人とも家へはいって来ました。おかあさんに、おとうさんから手紙が来なかったか尋ねました。ローリイは、今日は数学をやりすぎたので頭がふらつくから、ブルック先生を馬車で送っていくといい、
「どうです、みんないらっしゃい。今日は陰気だけど馬車は気持いいですよ。」と、じょうずに誘いかけました。
メグは、そうたびたびわかい男といっしょにドライブしないほうがいいという、おかあさんの意見にしたがいたかったので、ことわりましたが、ほかの三人は出かけることになりました。ローリイは「おばさん、なにか御用はありませんか?」と、いつもの愛くるしい声で尋ねますと、マーチ夫人はいいました。
「ありがとう。できたら郵便局へよって下さい。今日は手紙の来る日だのに、郵便屋さんが来ません。おとうさんは、お日さまがまい日でるように、まちがいなく手紙を下さるのに。」
そのとき、けたたましいベルが鳴って、まもなくハンナが一枚の紙を持って来ました。ハンナは、「おくさま、おそろしい電報が来ました。」といって、その電報が爆発でもするかのように、こわごわ出しました。
おかあさんは、それをひったくるようにして読みましたが、まるで弾丸を胸にうちこまれたかのように、まっさおになって、イスにたおれかかりました。ローリイは、水をとりに階下へかけおり、メグとハンナはおかあさんをだき起し、ジョウはふるえ声で読みあげました。
マーチ夫人へ――ゴシュジン[#「ゴシュジン」は底本では「ゴシジュン」] ジュウタイ スグコラレタシ。ワシントン ブランクビョウイン エス・ヘール
部屋は水をうったようにしんとなりました。娘たちは、じぶんたちの生活のあらゆる幸福と力がうばい去られるような気がしました。おかあさんは、すぐにわれにかえって、電報を読みなおし、悲痛な声でいいました。
「あたしはすぐに出かけます。けれど、もうまにあわないかもしれません。ああ、あなたたち、どうかおかあさんが、それに耐えられるように力を貸して下さい。」
しばらくは、とぎれとぎれのなぐさめの言葉や、助け合うという誓いの言葉や、神さまの加護を信ずる言葉にまじるすすり泣きの声のほかに、部屋にはなんのもの音もしませんでした。けれど、あわれなハンナがわれにかえり、じぶんでは気づかないちえで、ほかの者にいい手本を示しました。すなわち、ハンナにとっては、はたらくということが、たいていの心配ごとをなおす良薬でありました。
「神さまが、だんなさまをお守り下さいます。わたしは泣いてばかりいられません。おくさまがおたちになる仕度をしなければなりません。」と、ハンナは真心からいって、涙をエプロンでぬぐい、そのかたい手でマーチ婦人の手をにぎって、人一倍はたらくために出てきました。
「ハンナのいうとおりです。泣いているときではありません。みんなおちついてちょうだい。そしておかあさんに考えさせておくれ。」
おかあさんが、あおざめた顔をしながらも、気をとりなおして悲しみをおさえ、娘たちのためにいろいろ考えはじめたとき、娘たちも気をおちつけようとしました。
「ローリイはどこ?」と、おかあさんは、まず第一になすべきことをきめたのです。
「ここにいます。おばさん、どうぞなにかさせて下さい。」と、ローリイは、いそいでとなりの部屋から出て来ました。かれはこの一家の人たちの悲しみのなかに、いかに親しくても、まじってはならぬと思って、となりの部屋にしりぞいていたのです。
「あたしが、すぐ出発するという電報をうって下さ
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