には、ジョウが、食事の仕度をしながらつくった詩が書かれていました。
おとむらいがすむと、ベスは悲しみと、さっきのえびとで、胸がいっぱいになり、じぶんの部屋へひっこみましたが、ベッドがそのままになっていて、ねる場所もありませんでした。片づいているうちに、悲しみもやわらいで来たので、台所で片づけものをしているジョウの手つだいをしました。二人はへとへとにつかれました。ローリイは、エミイを馬車にのせてつれ出しました。すっぱいクリームで気持がわるくなっていたエミイは、大よろこびでした。
やがて、おかあさん[#「おかあさん」は底本では「おかさん」]が帰宅しました。三人の娘たちがはたらいていましたし、戸だなをちょっとのぞいてみて、経験の一部が成功したことがわかりました。
ところが、やっと片づけたのに、三人は休むこともできませんでした。と、いうのは、数人の来客があり、それお茶、それお使いというわけでした。けれど、露とともにたそがれがせまるころ、姉妹たちは六月のばらが美しく咲きはじめたポーチに集りました。
「なんていやな日だったでしょう。今日は。」
ジョウが口をきると、メグが、
「いつもより短いような気はしたけど、とてもいやだったわ。」
「ちっとも家みたいじゃないわ。」と、エミイ。
「おかあさんと、カナリヤがいなければ、家のような気がしないわ。」とベスは、涙ぐんで、からの鳥かごを見あげました。
「みなさん、かあさんは帰って来ましたよ、ベス、カナリヤがほしければ、明日買ってあげましょうね。」と、いいながら、おかあさんも娘たちの仲間入りをしました。おかあさんも、一日のお休みが、あまりたのしそうではありませんでした。
「みなさん、あなたたちの経験は、もうたくさんですか!」
「あたし、もうたくさん。」と、ジョウ、ほかの三人も、声をそろえて、
「あたしも!」
「おかあさんは、みなさんが、どんなふうにやるかと思って、わざとなにもかもほうって、出かけました。けれど、今日の経験で、みなさんは、家をたのしくするには、めいめいが、受持の仕事を忠実にやらなければならぬということがわかったと思います。ハンナとあたしが、みんなの仕事をしていれば、あなたがた[#「あなたがた」は底本では「おなたがた」]は、そう幸福で気らくだったとは思いませんが、とどこおりなくやっていけたのです。だから、かあさんは、だれもかれも、じぶんのことばかり思ったら、どんなことになるか、教訓としてみんなに見せておきたかったのです。あなたがたが、たがいに助け合い、まい日のお仕事があれば、ひまになったとき、それがとてもたのしく思えるし、くるしいときにはたがいに、しんぼうし合っていけば、家はどんなにたのしく美しいでしょう。わかりましたか?」
「わかりました。よくわかりました。」
娘たちは、口々にさけびました。
「では、かあさんのいうことを聞いて、もう一度、小さい重荷をしょうのですよ。たまには重く思えても、みんなのためになり、なれればかるくなっていきます。はたらくことは健康にもよく、たいくつはしないし、わるい心も起らないものです。身体にも心にもよく、お金や流行ものなどより、精神力や独立心をあたえてくれます。」
みんなは、はたらくことにきめました。よろこんで。ジョウは、お料理をけいこする、メグは、おかあさんにかわって、おとうさんへ送るシャツをぬう、ベスはピアノやお人形あそびにあまり時間をとれないで、まい日勉強する、[#「、」は底本では欠落]エミイは、ボタンのあなかがりがじょうずになるように、また文法にかなう言葉づかいのけいこをすると、てんでに決心をのべました。
「けっこうです。かあさんは、今度の経験がうまくいって、よかったと思います。もうくりかえさなくてもいいと思います。でもね。どれいのように、はたらきすぎないように、はたらくにもあそびにも、時間をきめて[#「きめて」は底本では「きめで」]、まい日を有益にたのしく送って、時間をじょうずに使い、時間のねうちをさとるようになさい。それできたら、貧乏でも、娘時代をたのしくすごせるし、年をとってからも後悔することもなく、この人生をりっぱに生きていけるのです。」
「よくわかりました。」と、娘たちは、おかあさんの教訓を、ふかくも心にとどめました。
第十二 ローレンスのキャンプ
ベスは郵便局長でした。たいてい家にいて、時間をきめて局へいくことができましたし、[#「、」は底本では「。」]かぎで小さな扉を開けて、郵便物をとって来て、くばるのがすきだったからです。七月のある日のこと、ベスはりょう手にいっぱい郵便物をかかえて帰り、家中にくばりました。
「おかあさん、はい、花束、ローリイは一度も忘れたことないのねえ。」と、いって、ベスはおかあさんの
前へ
次へ
全66ページ中34ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
水谷 まさる の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング