ということに、みんなの意見は一致しました。そして、つぎの日も、また、つぎの日も、休んであそびました。ところが、いよいよ一日が永く感じられ、なんとなくおちつかない気分になって来ました。すると、悪魔は四人の心をねらい、いろんなわるいことを見つけて、あばれはじめたのであります。
たとえば、メグは布地を小さくきりすぎて、一枚の服をだいなしにしてしまいました。ジョウは、本を読みすぎて目がぼやけ、いらいらした気分となって、やさしいローリイと、けんかして[#「けんかして」は底本では「けんかしてして」]しまいました。ベスは、あそんでばかりいないで、いつもの習慣で家事のお手つだいをするので、わりにいいほうでしたが、それでも、家のなかの気分に動かされて、いらいらしてしまい、人形をしかりとばしたりしました。エミイは、ひとりであそぶことが、むずかしいことがわかりました。一日中、絵をかいてもいられませんし、人形あそびはきらいでしたし、すっかり心のつかれをおぼえました。
金曜日の晩になると、だれもあそびにあきたとはいいませんでしたが、もう一日で一週間がおわるので、うれしく思いました。おかあさんのほうでも、ほうれごらんと、ちゃんと見てとって、この教訓をいっそう印象づけたいと思って、わざとハンナに土曜日一日、休みをあたえました。
土曜日の朝、みんなが起きてみると、台所には火の気はなく、食堂には朝御飯はなし、おかあさんもハンナもいません。
「あら、どうしたっていうんでしょう!」
ジョウがさけんだとき、メグはもう二階へかけあがっていき、まもなく、ほっとして、けれど、すこしはおかしそうな顔をしておりて来ました。
「おかあさんは、御病気ではないけど、おつかれでおやすみよ。今日一日は、みんなで好きなようになさいって。」
「そう。いいじゃないの、おもしろいわ、あたしなにかしたくて、うずうずしてたんですもの。」と、ジョウがいいました。
まったく、今、四人はすこし仕事がしたくなりました。メグがコック長となってさっそく食事の仕度がはじまり、みんなおもしろがってやりました。おかあさんは、じぶんのことはかまわないでといいましたが、おかあさんの食事は用意され、ジョウが二階へはこびました。わかしすぎた紅茶はにがく、オムレツはこげ、ビスケットは重曹でかたまって、ぶつぶつしていましたが、おかあさんは、感謝して受け、ジョウが去ってしまうと、おかしくてたまらなくて、ひとりで笑ってしまいました。
「かわいそうに、みんなこまっているでしょう。でも、そうつらいとも思っていないだろうし、後のためにもなることだから。」と、つぶやいて、おかあさんはじぶんで用意しておいたもっとおいしい食物をとり出し、運ばれた食事はわからないようにしまつして、食べたことにしておいたので、みんなはうれしがりました。これはおかあさんらしい、ちょっとしたうそでした。
ところで、階下ではいろんな不平が起りました。食事の失敗に、コック長はひどくくやしがりました。ジョウは、
「いいわ。お昼の食事は、あたしが女中になって用意するわ。ねえさんはおくさんになって、お客さまの相手をしてちょうだい。」と、いって、ローリイをよぶことを提案しました。
これは、賛成されました。そこで、ジョウは、さっそくローリイに招待状を書いて郵便局へ出しておきました。けれど、ジョウのうで前は、すこしあぶないようでした。メグが心配すると、
「だいじょうぶ、コンビーフも、じゃがいももある。つけ合せに、アスパラガスとえびを買ってくるわ。それから、ちさでサラダをつくりましょう。つくりかたの本を見ればいいわ。デザートは、白ジェリイといちご、もっとぜいたくすれば、コーヒーも出すのよ。」
「ジョウ、あなたは。しょうがパンとキャンディだけしかつくれないじゃないの。あたしこの御馳走には関係しないわよ。だって、あなたが勝手にローリイをよんだんだから。」
「おねえさんは、ローリイを、そらさないようにして下さればいいわ。でもこまったら、なんでも教えて下さるでしょうねえ?」と、ジョウはむっとしました。
「ええ、でもあたしいろんなこと知らないわ。おかあさんに、尋ねてからにするほうがいいわ。」
ジョウは、じぶんのうでをうたがうようなことをいわれたので、ぷりぷり怒って部屋を出て、おかあさんへ相談にいきました。
「好きなようになさい。おかあさんのじゃまをしないでね。あたしは食事は外でします。家のことなどかまっていられません。今日はお休みです。本を読んだり、手紙を書いたり、お友だちをたずねたりして過します。」
いつもいそがしいおかあさんが、今日は朝からゆれイスにかけて本を読んでいるふしぎなありさまと、けんもほろろな、その言葉に、ジョウは、
「へんだわ。おかしいわ。」と、ひとり言をいい
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