の、許してやれませんわ。」
 そういって、ジョウは、さっさと寝室へいってしまったので、その夜はおもくるしい気分でおわりました。
 つぎの日も、おもくるしい気分は去らず、みんなつまらなそうでした。ジョウは、ぷんぷんして、ローリイを誘ってスケートにでもいってみようと思って出かけていました。エミイは、じぶんのほうからあやまったのに、ジョウがまだ怒っているので、なお気をわるくしました。メグは、エミイにむかって、[#「、」は底本では「、」」]
「あなたがわるかったのよ。大切な原稿をなくされたんですもの、なかなか許せないわ。だけど、いいおりを見て、あやまればいいと思うの。だから、あなたもスケートにいってごらんなさい。そしてジョウがローリイと遊んで、きげんがよくなったとき、ジョウにキッスしてしてあげるか、なにかやさしいことしてあげるのよ。そしたら、心から仲なおりしてくれるにちがいないわ。」
 この忠告が気にいったので、エミイはいそいそと仕度をして、後をおいかけました。川までは、そんなに遠くなかったが、エミイがいったとき、二人はすべる用意ができていました。ジョウは、エミイのすがたを見ると、くるりとせなかをむけました。ローリイは、エミイの来たのに気がつかず、氷のあつさをしらべるために、そのひびきを聞きわけながら、用心ぶかく岸にそってすべっていきました。ローリイは、角をまがるとき、
「岸について来なさい。まんなかはあぶない。」
 そういって、すがたが見えなくなりました。
 ジョウが、すべって、その角までいったとき、エミイはずっとはなれたところで、川のまんなかへすべっていきました。ジョウは、みょうな心さわぎをおぼえましたが、ふいに氷のさける、ばりっという音とともに水けむりをたて、エミイがりょう手をあげ、悲鳴とともに落ちこむのを見ました。その悲鳴に、ジョウは心臓がとまると思うくらい、おどろきました。ローリイをよぼうとしましたが声が出ません。すると、なにかが、じぶんのそばを走ったと思うと、
「ぼうをもって来て、早く、早く!」と、ローリイのどなる声が聞えました。
 それから、ジョウは、まるで夢中でした。ただし冷静なローリイのさしずのままになって、おびえているエミイを救いあげること[#「こと」は底本では「ことと」]ができました。
 ふるえて、ぼとぼとしずくをたらしながら泣いているエミイを、二人は
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