イがジョウと快活にしゃべって、顔が今日にかぎって、あかくいきいきしているのを見まもっていたからです。
「ふむ、この娘のいうとおり、孫はさびしいのだ。今日、孫はかわった。よし、この家の娘たちが、孫をどうするか見ていよう。」
老人も、ほんとは気さくで、こだわりがない人だったのです。だから、孫のことも理解することができました。お茶がすむと、ジョウは帰るといい出しましたが、ローリイはひきとめて、ジョウを温室へつれていき、りょう手にもてないほど、美しい花をたくさん切って、
「これ、おかあさんにあげて下さい。そして、おとどけ下すったお薬、とても気にいりましたとおっしゃって下さい。」
客間へ帰ったとき、老人は炉の前に立っていました。ジョウの目は、そこにあるグランド・ピアノにすいつけられました。
「あなた、ひくの?」
「ときどき」と、ローリイは、ひかえ目に答えました。
「今、ひいてちょうだい。帰ったらベスに話してやりたいから、聞いていきたいの。」
「あなた、さきにひかない?」
「あたしだめなの。音楽はすきだけれど。」
ローリイがひきました。ジョウは花たばに鼻をおしつけながら、耳をすましました、ローリイが、じょうずなのに、ちっとも気どらないので尊敬をよせました。ひきおわってから、あまりほめたのでローリイはまっかな顔をしました。
「いや、ほめるのはもうたくさん。この子の音楽はまずくはないが、もっとほかのだいじなことに、身をいれてもらいたいのじゃ。ああ、もうお帰りか。ありがとう、またお出で、おかあさんによろしく。では、さよなら、お医者のジョウさん。」
老人の握手はかたかったが、なにか気にいらないようすでした。あとで、ローリイにたずねたら、ぼくがピアノをひいたからだといいました。なぜというと、いつか話すといいました。ローリイは、
「また、来てね。」と、名残りおしそうでした。
「あなたが、よくなったら、家へ来るという約束をすれば。」
「ええ、いきます。」
ジョウが帰って来て、のこらず報告すると、みんなもおしかけたくなりました。マーチ夫人は、おとうさんのことを忘れないでいる老人と話したかったし、メグは温室が歩きたかったし、ベスはグランド・ピアノに心ひかれ、エミイはりっぱな絵や彫刻が見たかったのです。
「おかあさん。ローレンスさんは、なぜローリイさんがピアノをひくのをきらうのでしょう?
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