お祈りするのたのしそうね。」
「ええ、あなたもお祈りなさるといいですよ。化粧室を礼拝堂につくってあげましょう。おばさんがいねむりをなさっているあいだに、じっとすわって、神さまにおねえさんをおまもり下さるように、お祈りあそばせ。」
 エミイは、その思いつきが気にいり、礼拝堂をつくるように頼みました。
「マーチおばさんがおなくなりになったら、この宝石はどうなるのかしら?」
「あなたと、おねえさんたちのところへいくのですよ。遺言状を見ました。あたしは。」
「まあ、うれしい。今、下さればいいのに。」
「今は早すぎます。はじめに結婚なさるかたに真珠、それから、あなたがお帰りになるときには、トルコ玉の指輪、おくさまはあなたが、お行儀がいいといって、ほめていらっしゃいました。」
「ほんと? あの美しい指輪がいただけるの。まあ、うれしい。やっぱりおばさん好き。」と、エミイは、うれしそうな顔をして、それをきっと手にいれようと心をきめました。
 その日から、エミイは、おとなしく、なんでもいうことを聞いたので、マーチおばさんはじぶんのしつけが成功したと思って、たいそう満足しました。エスターは、礼拝堂をつくってくれ、聖母の絵をかいてくれました。エミイは、心をこめてここに祈り、ベスの病気をなおし、じぶんを正しく導いて下さるように願いました。
 エミイは、善良になるために、マーチおばさんのとこに遺言状をつくろうと思いました。遊び時間に、エスターから法律上の言葉を教えてもらって、じぶんの所持品を公平にわけることを書きました。
 エスターは証人となって署名してくれました。エミイは、ローリイに、第二の証人になってもらうつもりでした。ところで、この部屋には、流行おくれの服がいっぱいはいったタンスがあって、エスターはエミイに、それで自由に遊ばせました。その服を着て、長い姿見の前をいったり来たりして、わざとらしくおじぎをしたり、衣ずれの音をさせたりするのが、おもしろくてたのしみでした。
 この日は、そんなことを、あまり夢中でやっていたので、ローリイの鳴らしたベルにも気がつかなかったし、そっと来てのぞいたのも知りませんでした。エミイは、青色のドレスと黄色の下着をつけもも色のふちなし帽子をかぶり、扇子を使ってすましてねり歩いたのでした。ローリイが、後でジョウに話したところによると、エミイがそうやって気どって歩
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