ら、ひきとめるのがむずかしいと思うわ。」
「そう、そんなに心配していてくれるの。」
 ローリイは、しばらくだまりこんで歩いていました。ジョウは、すこしいいすぎたかしらん[#「かしらん」は底本では「かしらう」]と思いましたが、やがて、ローリイは、
「あなたは家へ帰るまで説教するつもり?」
「いいえ、どうして?」
「説教するつもりなら、ぼくバスにのるし、しないなら、いっしょに歩いて、とてもおもしろいこと聞かせてあげる。」
「しない。だから、そのニュース聞かせて。」
「よろしい、これは秘密ですよ。ぼくがいったら、あなたのもいわなければだめですよ。」
「あたし秘密なんかないわよ。」と、ジョウはいいましたが、じぶんにも秘密があることを思って、きゅうに口をつぐみました。
「あるでしょう。かくしたってだめ、さっさと白状なさい。いわなければ、ぼくもいわない。」
「あなたの秘密おもしろいの?」
「おもしろいとも! あなたのよく知っている人のこと。あなたが知っていなければならない秘密だから、教えてあげたくてうずうずしているんです。さあ、あなたからですよ。」
 ジョウは、家の人にもいわないこと、からかわないことを念おして、
「じゃいうわ。あたしね、小説を二つ、新聞社の人のところへおいて来たの。そして、来週返事があるの。」と、相手の耳にささやきました。ローリイは、
「アメリカにその名も高きマーチ女史ばんざい!」と、さけんで帽子を高くなげ、それをうけとめました。もう郊外を歩いていたので、それは二羽のがちょうと、四ひきのねこと、五羽のにわとりと、六人のアイルランド人の子供をよろこばせました。
「返事なんか来ないわ。このこと、たれにも失望させたくなかったから、いわなかったの。」
「なあに、だいじょうぶ、あなたの書くもの、シェークスピアの書いたものくらい、ねうちがありますよ。活字になったらすてきだな!」
 ジョウは、そういわれると、うれしく思いました。友だちの賞讃はいいものです。
「それで、あなたの秘密ってなあに? 公明正大にいいなさい。」
「いってしまうと、こまることになるかもしれないんですが、いわないと気がらくになれないし、あのね。メグの片っぽうの手ぶくろのありかを知っているんです。」
「それっきり?」
「今のところ、それでじゅうぶんだよ、どこにあるかということを教えたら。」
 ローリイは、ジ
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