ちわびるそのあいだに、たがいに仕事につとめ、日々をむだにしないようにとお告げ下さい。娘たちは、御身には愛すべき子供であり、忠実に義務をおこない、[#「、」は底本では「。」]心中の敵と勇ましく戦い、みごとにうち勝って、わたしが凱旋のときには、以前にもまして愛らしく、誇りうるように生長しているように、出発のときに申し聞かせたことを、すべてよく記憶していると思います。」
ここまでくると、みんな鼻をすすりはじめました。涙をとめることはできません。
「あたしわがままだったわ、おとうさんが失望なさらないように、いい子になります。」と、エミイがいいますと、メグが、
「みんないい子になりましょう! あたし見栄ばかり気にして、はたらくこときらいだったわ、もうやめるわ。」と、さけびました。
「あたしも、いい子になって、らんぼうなまねよすわ。どこかへ、いきたいなんて思わずに、家でじぶんのつとめをするわ。」
ジョウは、家でおとなしくしてるのは、敵一人や二人にたちむかうよりむずかしいと思いながらいいました。ベスは、だまっていましたが、青い軍用靴下でそっと涙をふき、身近の義務を果すための時間のむだにしまいとして、せっせと編みました。
おかあさんは、ジョウの言葉につづいた沈黙を、快活な声でやぶりました。
「あなたたちが小さかったとき、「巡礼ごっこ」の遊びをしたことおぼえていますか? みんなせなかに、あたしの小布のふくろをしょって、帽子をかぶり杖をつき、まいた紙をもって、破滅の市の地下室から、日の照っている屋根の上までいき、そこで天国をつくるために、いろいろな美しいものをいただくくらい、うれしいことはなかったでしょう。」
みんなは、そのときのいろんなできごとを思いだして話しましたが、エミイまでが、もうこんなに大きくなっては、あんなあそびできないというのをとがめて、おかあさんはいいました。
「いいえ、年をとりすぎてはいません。あたしたちは、まあお芝居をしているようなものです。荷物はここに、道は目の前にあります。よいことと、しあわせを求める心が、たくさんの苦労や、あやまちのなかを通りぬけて、ほんとの天国、いいかえれば平和に導いてくれるのです。さあ、小さい巡礼さんたち、今度はお芝居あそびではなく、本気でやって、おとうさんがお帰りになるまでに、どのあたりまで巡礼ができるか、やってみてはどう?」
「
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