かれも、じぶんのことばかり思ったら、どんなことになるか、教訓としてみんなに見せておきたかったのです。あなたがたが、たがいに助け合い、まい日のお仕事があれば、ひまになったとき、それがとてもたのしく思えるし、くるしいときにはたがいに、しんぼうし合っていけば、家はどんなにたのしく美しいでしょう。わかりましたか?」
「わかりました。よくわかりました。」
娘たちは、口々にさけびました。
「では、かあさんのいうことを聞いて、もう一度、小さい重荷をしょうのですよ。たまには重く思えても、みんなのためになり、なれればかるくなっていきます。はたらくことは健康にもよく、たいくつはしないし、わるい心も起らないものです。身体にも心にもよく、お金や流行ものなどより、精神力や独立心をあたえてくれます。」
みんなは、はたらくことにきめました。よろこんで。ジョウは、お料理をけいこする、メグは、おかあさんにかわって、おとうさんへ送るシャツをぬう、ベスはピアノやお人形あそびにあまり時間をとれないで、まい日勉強する、[#「、」は底本では欠落]エミイは、ボタンのあなかがりがじょうずになるように、また文法にかなう言葉づかいのけいこをすると、てんでに決心をのべました。
「けっこうです。かあさんは、今度の経験がうまくいって、よかったと思います。もうくりかえさなくてもいいと思います。でもね。どれいのように、はたらきすぎないように、はたらくにもあそびにも、時間をきめて[#「きめて」は底本では「きめで」]、まい日を有益にたのしく送って、時間をじょうずに使い、時間のねうちをさとるようになさい。それできたら、貧乏でも、娘時代をたのしくすごせるし、年をとってからも後悔することもなく、この人生をりっぱに生きていけるのです。」
「よくわかりました。」と、娘たちは、おかあさんの教訓を、ふかくも心にとどめました。
第十二 ローレンスのキャンプ
ベスは郵便局長でした。たいてい家にいて、時間をきめて局へいくことができましたし、[#「、」は底本では「。」]かぎで小さな扉を開けて、郵便物をとって来て、くばるのがすきだったからです。七月のある日のこと、ベスはりょう手にいっぱい郵便物をかかえて帰り、家中にくばりました。
「おかあさん、はい、花束、ローリイは一度も忘れたことないのねえ。」と、いって、ベスはおかあさんの
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