、あなたには、あたしのした、あさましいこと、すっかり聞いてほしいわ。」
「さあ、聞きましょうね。」と、おかあさん[#「おかあさん」は底本では「あかあさん」]は、にこにこしながらも、すこし心配そうでした。
「みんなで、あたしをかざりたてたことは、お話しましたが、髪をカールしたり、白粉をぬったり、ドレスを着せたりしたこと、まだ話しませんでしたね。ローリイは、正気の沙汰ではないと思ったでしょう。あたしは、お人形のようだとか、美人だとかおだてられました。つまらないこと[#「こと」は底本では「と」]とはわかっていながら、おもちゃになりました。」
「それっきり?」と、ジョウがいいました。
「まだ、あるの。シャンペンを飲んだり、ふざけたり、はねまわったり、けがらわしいことばかり」と、メグは自責の念に堪えられないようでした。
「もっと、なにかあったでしょう?」と、おかあさんが、やさしくメグのほおをなでながらいいました。
「ええ、とてもばかげたことなの。だって、みんながあたしとローリイのこと、あんなふうにいったり考えたりするのんですもの。」
 メグは、マフォット家で聞かされたいろんなうわさ話をしました。おかあさんは、こんな考えを純真なメグの心につぎこんだことを不快に思って、唇をぎゅっとむすんでいました。ジョウは、怒ってさけびました。
「そんなばかなこと、あたし聞いたことがないわ。なぜおねえさんは、その場でいってやらなかったの?」
「あたしにはできなかったの。でもあんまりひどいので、しゃくにさわるし、はずかしいし、帰って来なければならないのに、帰るのも忘れてしまって。」
「あたしたちのような貧乏人の子供について、そんなつまらぬうわさ話をしていることを、ローリイに話したら、きっとどなりつけるでしょうね。」
「ローリイにそんなこといったら、いけませんわ。ねえ、おかあさん。」
 おかあさんは、まじめな顔でいいました。
「いけません。ばかなうわさ話は、二度と口にしてはいけません。できるだけ早く忘れることです。あなたをいかせたのは、おかあさんの失敗でした。親切なんでしょうが、下品で、教養があさく、わかい人たちにいやしい考えを持たせる連中ですからね。メグ、今度の訪問があなたにわるい影響があるようなら、かあさんは残念です。」
「御心配下さらないで。あたしは、自分のいけなかった[#「なかった」は底本で
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