シャアを相手に、メグがシャンペン酒を飲むのを見たローリイは、だまっていられませんでした。
「そんなもの飲むと、明日、頭痛がしますよ。ぼくは飲みません。おかあさんだって[#「だって」は底本では「たって」]、お気にいらないでしょう。」
ローリイは、ネッドとフィッシャアに聞かれないように、メグによりそって、そうささやきました。
「今夜は、あたし気ちがいみたいなお人形なの。明日からはいい子になるわ。」
「それじゃ、明日もここにいたいんですね。」
ローリイに、ついとはなれて立ち去りました。
メグは、踊ったり、ふざけたり、しゃべったり、ローリイがあきれるほど、はしゃぎました。帰りがけに、ローリイがあいさつに来ると、メグは、もう頭痛になやまされていましたが、
「いいこと! 頼んだこと忘れないでね。」と、むりに笑顔をつくっていいました。
「死をもっての沈黙」と、ローリイは、フランス語で、芝居がかりで答えて立ち去りました。
メグは、もう疲れきっていました。わびしい気分で床にはいりましたが、あくる日も一日気分がわるく、土曜日になって、二週間の遊びと、ぜいたくざんまい[#「ざんまい」は底本では「さんまい」]にあきあきして家へ帰って来ました。
日曜日の晩、メグはおかあさんとくつろいだとき、あちこち見まわしながら、
「年中、お客さわぎなどいやだわ。しずかに暮すのたのしいわ。りっぱでなくても、じぶん[#「じぶん」は底本では「じぶ」]の家が一ばんいいわ。」と、のびのびした表情でいいました。
「そう聞いてかあさんはうれしい。あなたがりっぱなところへいったので、家がつまらなく[#「つまらなく」は底本では「つまちなく」]、みじめに見えやしないかと、心配していたのよ。」と、おかあさんの目の、気づかわしそうな影が消えました。
メグは、おもしろそうに、いろいろの冒険を話しました。けれど、心の中になにかおもくるしいものがあるらしく、九時がうってジョウがねようといい出したとき、メグは[#「メグは」は底本では「メグに」]思いきったというふうに
「おかあさん、あたし白状することがありますの。」
「そうだと思っていました。どんなこと!」
「あたし、むこうへいきましょうか?」と、ジョウが気をきかしていいました。
「いいえ、いて。なんでもあなたには、うち明けてるじゃないの。いもうとたちの前では、はずかしいけど
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