うたふ
どこかでうたふ。
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   風と繪本

だあれもゐない
あたしの部屋《へや》で
風がぱたぱた
繪本をめくる

おいしいお菓子の
繪のあるペーヂ
風はしばらく
見とれてゐたよ。

きつと小《ちひ》ちやい
子供の風だ
遊《あそ》ばうと思つたら
すぐ逃《に》げちやつた。
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   露の小人

白百合 白百合
花のなかに
露の小人が
五六人。

おねども白い
まくらも白い
みんなぐつすり
ねむつてた。

白百合 白百合
風が來て
ゆすぶりや露の
小人たち。

お目々さまして
あくびして
ころころころと
ころげ出《で》た。
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   ジヤム地獄

落ちた落ちたよ
小さな蠅が
赤いあんずの
ジヤム地獄。

出よう飛ばうと
あせつたけれど
羽根や手足《てあし》が
ねばつくばかり。

泣いた泣いたよ
小さな蠅は
助けておくれと
聲はりあげて。

けれどぼくなら
もし落《お》ちたつて
落ちてうれしい
ジヤム地獄。
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   トランプちやん

かはいい
あかちやん
トランプちやん。

あかちやん
お口《くち》は
ダイヤの一。
お顏《かほ》のな
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