はだかに
なつちやつて
露の水風呂《みづぶろ》
つかふんだ。

花のにほひの
とけこんだ
露は身體《からだ》に
しむだらう。

ぼくは顏だけ
出したまま
ララララララと
うたふんだ。

とても巨きな
白い百合
咲いてるとこを
知らないか。
[#改ページ]

   芒と月

さつさ、すすきの
白い穗は
風に吹かれて
みなうごく

さつさ、うごけば
白い手よ
おいでおいでと
みなまねく。

さつさ、まねけば
雲《くも》のかげ
月がちらりと
顏出した。

さつさ お月さん
出した顏
にこにこわらつて
まんまるい。
[#改ページ]

   青いかげ

青いね、青いね
森のなか
お顏のうへの
青いかげ
白い服にも
青いかげ。

青いね、青いね、
森のなか
心にもさす
青いかげ
心がひつそり
澄んで來《く》る。

青いね、青いね、
森のなか
ときどきみんなで
來てみよね
なんだかふしぎな
ところだね。
[#改ページ]

   秋風

この風こそは
秋風よ
さらさらさらと
さびしいよ。

山の兎は
長い耳
立ててひつそり
聞いたらう。

山の小萩《こはぎ》は
ほろほろと
花をこぼして
吹かれたらう。

この風こそは
秋風よ
山から吹いて
さびしいよ。
[#改ページ]

   ほんとにしないけど

みんなはほんとにしないけど
ぼくはたしかに見たんだよ。

あの夕やけの西の空
赤くそまつた雲のうへ
肥つたはだかのかはいい子。

みんなはほんとにしないけど
ぼくはたしかに聞いたんだ。

その子が鳴らす金の鈴
遠くかすかにさはやかに
胸にしみ入るいいひびき。

みんなはほんとにしないけど
ぼくはたしかに知つてゐる。

その子はぼくを好《す》いてゐて
鈴を鳴らしてうれしそに
おいでおいでと誘ふんだ。
[#改ページ]

   おとぎばなし

おとぎばなしを探《さが》さうと
町へ出かけてみたけれど
町はほんとにつまらない。

青い乘合自動車は
青いあひるのやうだけど
金の卵は生まないし

角《かど》の大きなビルデイング
お城のやうだが窓からは
さびしい王子は見てないし

いろんな人も通るけど
銀の魔法の杖をもつ
お爺さんは通らない。

やつぱり庭の芝のうへ
空を見ながらねころべば
おとぎばなしは見つかるよ。
[#改ページ]

   雪

吹雪《ふぶき》の山でまた一人
死んだと出てる新聞を
見な
前へ 次へ
全10ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
水谷 まさる の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング