姉娘たちも、驚いて顔色を変えました。
 シンデレラは、屋根裏の戸棚から、もう一つのガラスの靴をとり出して来て、片方の足にはきました。もう疑う余地はありません。
 そこへ、いつの間にか、魔法使のお婆さんが来ました。
 そして、シンデレラの身体にちょっと杖をあてますと、ぼろ服はたちまち美しい服に変りました。姉娘たちは、思わずその前にひれ伏してしまいました。
『シンデレラさん、どうぞ許して下さい。わたしたちは、意地わるばかりしました。』
『ほんとに、長い間、苦しめました。さぞ、辛かったでしょう。どうぞ許して下さい。』
 二人は、心からお詫《わび》をしました。
 そこへ、お母さまも来ました。お母さまも泣いてあやまりました。
『シンデレラや。どうぞわたしをぶっておくれ、たたいておくれ、蹴っておくれ。』
 お母さまは、気が狂ったようにいいましたが、もともとやさしい気だてのシンデレラは、すこしも怨《うら》みがましいこともいわず、ただうれし泣きに泣いて許しました。
 ああ、そのために、シンデレラは、いよいよ美しく、光りかがやいて見えました。家来たちは、シンデレラが美しいばかりでなく、心も美しいことを知りました。この方よりほかに、王子さまの結婚なさる相手はいないと思いました。
『さ、一刻も早くお城へまいりましょう。王子さまはお待兼ねでございます。』
 家来たちは、シンデレラにお供をして、お城へ行きました。王子さまのお喜びは、たとえようもありません。
 それから間もなく、賢い王子さまと、美しいシンデレラの結婚式が、国中の人々の祝福の間に行われました。そして、いつまでも凋《しぼ》むことを知らぬ、白と紅《あか》の薔薇のように、二人は楽しく幸福でありました。[#地から2字上げ](おわり)



底本:「世界名作物語」少女倶樂部六月号附録、大日本雄辯會講談社
   1937(昭和12)年6月1日発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
※底本は総ルビでしたが、一部を省きました。
※冒頭の「シンデレラを讃う」は、底本では巻頭の口絵に掲載されています。
入力:大久保ゆう
校正:鈴木厚司
ファイル作成:
2003年12月1日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www
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