話をしながら、片手をにゆッとまへにつき出しました。トゥロットはそのいきほひのすごいのを見て、これは、ミスもスケボラのやうに、じぶんで手をやいたことがあるのぢやないかとおもひました。しかし、ざんねんなことには、ミスの手には手袋がはまつてゐるので、手の先がやけおちてゐるかどうか、それが見えません。
あゝァ、やつとイギリスの歴史になつて来ました。
聖地パレスティーヌで、サラセン人をほろぼしつくしたのはリシャールです。ミスの日がさはサラセン人をきりたふし、よろひへうちこみ、または、そのときのリシャールの王家の旗じるしのやうに空中にゆらめきました。
トゥロットはミスがよろひを着て、騎士のやうに馬にまたがつて、やばん人にせめかゝる、いさましいすがたをかんがへました。ミスには、たぶん、よろひなぞはいらないでせう。あんなに、からだがかたいのですもの。この人にあたれば、どんな矢だつてみんなをれてしまふでせう。これではサラセン人も気のどくです。
ミスは一しようけんめいに話しつゞけます。
「近代では、かういふ崇高な功績といふものはきはめて少くなりました。つまり、イギリス人の英雄的な行為を必要とする出
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