むつかしくなりました。トゥロットは、きつと、こんなことになるだらうとはおもつてゐましたが、いよ/\となると、うんざりしてためいきをつきました。まいあさ、ミスに、前の日にしたわるいことを話すと、ミスはきつとすぐに、あなたにはこれ/\の徳性がたりないと言つてくど/\話し出すのがおきまりです。中でもイギリスの歴史から一とう多く例をひいて来ます。イギリスには、いろんな徳性が、どつさり、あふれてゐるものと見えます。ですから、トゥロットの頭の中にある英雄は、みんな、イギリスの兵たいのなり[#「なり」に傍点]をしてゐます。
このまへトゥロットが、人の髪の毛を引つぱつたことをうちあけますと、ミスは友人といふもののうつくしさををしへると言つて、アシールとパトロークルのお話をしました。
トゥロットには、どういふわけか、そのアシールとパトロークルのことをおもふと、いつでもイギリス人の曲馬団で、うたつたりをどつたりしてゐた黒ん坊の顔が目にうかびました。ソクラテスだつて、トゥロットには、金ぶちの目がねをかけた、バラ色の顔をしたイギリスふうの老紳士のやうにしかおもはれず、聖ルイさへも、牧師のウエブスターさんの
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