泣きました。そしてしまひに、
「もういゝから、泣かないでおくれ。私《わたし》は、おまへがかはいさうだからむかへに来たのです。さあこれを食べて、一しよに母さまのところへいらつしやい。」
かう言つて、空からもつて来た果物を食べさせました。男の子はそれを食べると、一人でに悲しさをわすれて、お母さまと一しよに、空へ上りました。
そのあくる日、二人の旅人が森をとほりかゝつて、猟人の家《うち》へはいりました。すると、家《うち》の中には人が一人もゐないものですから、二人は変に思つて、
「それでは、この家《うち》の人がかへるまで、二人でこゝに住んでゐよう。」と相談しました。しかし、家《うち》の人は、いつまでたつてもかへつては来ませんでした。二人の旅人は、とう/\死ぬまで、長い間そこでくらしました。
二人はその間、いつも月のてる晩には、すゐれんの泉の中で、三人の女と、四人の子どもとが、楽しさうに水を浴びてゐる声を聞きました。そして明け方になると、かならず空の上から、
「おかへりなさい。お日さまがお出ましにならないうちにかへらないと、お馬が梯子《はしご》をふみ切つてしまひます。」
かう言つて、みん
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