まり遠くまで歩いたからよ。あしたは猟を休んで家にゐませうね。」と言ひました。お父さまは、
「あゝ、くちびるがかわく。冷たい水を飲ましてくれ。」と言ひました。男の子は、おほいそぎですゐれんの泉へかけていきました。お父さまはその水を一と口飲むと、そのまゝすや/\と眠つてしまひました。男の子は夜どほし起きて、そばについてゐました。猟人は、とう/\夜明けまへに死んでしまひました。男の子は、大声を上げて泣きました。
 夜が明けると、男の子は泣き/\木を切り集めて、お父さまの死骸《しがい》を焼きました。男の子は、もう、たつた一人でこの森にゐるのはいやでした。でも、どこと言つていくところもありません。男の子は、森の草の上に顔を伏せて、せめてもう一どお母さまにあひたいと思ひながら、日がくれるまで泣きつゞけに泣いてゐました。
 やがて、大空には星がかゞやきはじめました。すると蜘蛛《くも》の王さまは、おほいそぎで下界にとゞく梯子《はしご》をつむぎ出しました。星の女はそれにつたはつて、泣いてゐる男の子のところへ下りて来ました。
 男の子は泣き/\お父さまのなくなつたことを話しました。お母さまも、さめ/″\と
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