すぐにおほきなパンのきれへバタをつけたのをもつて、二人で出かけました。
おばあさんは、そのパンを、こくめいに、小さくいくつにもちぎつて、
「さァピエロや、おたべよ。わたしだよ。ローズも来てゐるよ。」と言ひ/\、間をおいては一つ一つなげこみました。
「ピエロや、食べたかい、ピエロや。」とローズも、かはりばんこによびつゞけました。ピエロはありたけのパンをすつかり食べてしまふと、もつとくれといふやうにほえつゞけました。
二人はその夕方も、もつて来ました。あくる日もいき、それから、まいにち一どづゝ、きまつて出かけました。
そのうちに或《ある》朝、いつものやうに、パンの小ぎれをなげ入れようとする間ぎはに、とつぜん、穴の中からおそろしいうなりごゑがしました。よく聞きわけますと、中にはピエロのほかに、ずつと大きな犬が一ぴきゐるやうです。だれかゞまたなげこんでいつたものと見えます。ローズは、
「ピエロよ、ピエロよ。」とよびました。ピエロはその声をきいて、うれしさうにほえました。おばあさんはパンのきれをむしり/\してはなげこみました。すると、どうでせう、そのたんびに、おほきい方の犬がウワ※[#小書
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