き片仮名ン、377−上−6]といふのと一しよに、ピエロは、ひどくかみつかれたやうに、キヤン/\なきたてるのです。
パンは、ピエロよりも、うんとつよい、大きな一方の犬が、すつかり横どりをして食べてしまふらしいのです。
「ほい、ピエロよ。これはおまいのだよ。おまいお食べよ、いゝか。とられちやいけないよ。」と、ねんをおしてなげてやつても、やはりピエロはかみつかれて、キヤン/\いふだけで、もう一つの犬が食べてしまふやうでした。
「ちよッ、よさうよ、ローズ。人がなげこんだ犬にものをくれては、ひきあはないよ。これから方々の人が何びきすてにくるかしれないものを、それを一々わたしがやしなふことになつちやァたいへんぢやないか。さ、かへりませう。」と、おばあさんは、すつかりおこつて、のこつたパンのきれをもつたまゝ、ぷり/\してかへりました。そして、ふくれて歩き/\、そのパンをじぶんがもぐ/\食べました。人のいゝローズは、青い前かけの角で涙をふき/\ついてかへりました。
底本:「日本児童文学大系 第一〇巻」ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日初刷発行
底本の親本:「鈴木三重吉童話全集 第五巻」文泉堂書店
1975(昭和50)年9月
初出:「赤い鳥」赤い鳥社
1926(大正15)年9月
入力:tatsuki
校正:林 幸雄
2007年2月19日作成
青空文庫作成ファイル:
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