おきました。
 王さまたちは、もうこれでだいぢやうぶだと思つてよろこんでゐますと、鐘の音は、そのおほひを突きとほして、やつぱりじやん/\聞えて来ます。王さまは、そのたんびに、悔しがつて、ひげをかきむしつて怒り狂ひました。王女や小さな妖女たちは、おびえておん/\泣きました。
 村の牛飼《うしかひ》や羊飼《ひつじかひ》たちは、とき/″\湖水の中から、ふしぎな泣きごゑが聞えるものですから、気味悪がつて、その近くの草つ場へは一人も出てこなくなりました。


    二

 そのうちに、村の或《ある》百姓の家《うち》で、よその土地から来た、牛飼《うしかひ》の若ものをやとひました。百姓は、そのわかものに、湖水のふちの草つ場へはけつしていかないやうに注意しておきました。
 ところが、その若ものは、剛情な男でしたから、さう言はれると、わざと、夜一人で出かけていつて、湖水のふちでたき火をして、そのそばへ寝ころんでゐました。
 すると、間もなく、ふは/\した、緑いろの、びろうどの着物を着た、小さな人が、どこからともなくひよいと出て来ました。見ると、その小さな人は、ぬら/\した青い髪の上に、立派な金の冠をつ
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