湖水の鐘
鈴木三重吉

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)或《ある》山の村に、

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)いなご[#「いなご」に傍点]に

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)きら/\した
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

    一

 或《ある》山の村に、きれいな、青い湖水がありました。その湖水の底には、妖女《えうぢよ》の王さまが、三人の王女と一しよに住んでゐました。王さまは、夏になると、空の青々と晴れた日には、よく、小さな妖女たちをつれて、三人の王女と一しよに、真珠の舟に乗つて出て来て、湖水の岸のやはらかな草むらへ上《あが》りました。
 妖女たちは大よろこびで、草の中をかけまはつたり、小さな草の花の中へはいつて顔だけ出してお話をしたり、大きないなご[#「いなご」に傍点]にからかつたりして、おほさわぎをしてあそびました。中には、蜘蛛《くも》の網の、きら/\した糸をあつめて、顔かけをこしらへてかぶるものもありました。小さなかはいらしい妖女には、その顔かけが、よくにあひました
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