をひっかかえていらしって、それを押《お》しつけて、坂の口をふさいでおしまいになりました。
女神は、その岩にさえぎられて、それより先へは一足も踏《ふ》み出すことができないものですから、恨《うら》めしそうに岩をにらみつけながら、
「わが夫の神よ、それではこのしかえしに、日本じゅうの人を一日に千人ずつ絞《し》め殺してゆきますから、そう思っていらっしゃいまし」とおっしゃいました。神は、
「わが妻の神よ、おまえがそんなひどいことをするなら、わしは日本じゅうに一日に千五百人の子供を生ませるから、いっこうかまわない」とおっしゃって、そのまま、どんどんこちらへお帰りになりました。
神は、
「ああ、きたないところへ行った。急いでからだを洗ってけがれを払《はら》おう」とおっしゃって、日向《ひゅうが》の国の阿波岐原《あわきはら》というところへお出かけになりました。
そこにはきれいな川が流れていました。
神はその川の岸へつえをお投げすてになり、それからお帯やお下ばかまや、お上衣《うわぎ》や、お冠《かんむり》や、右左のお腕《うで》にはまった腕輪《うでわ》などを、すっかりお取りはずしになりました。そうする
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